ゆるり*ブラって、どうやって思いついたんですか?というご質問に答えて。
「パンツとお揃いのブラを作って」とは、パンツを売り出してすぐくらいから言われて
いました。けれどなかなかその気が起きず、頭の端っこにずっと引っかかっていました。
そんなある日、たくさん溜まってきたパンツの端切れが気になりだし、ああ、これを
何かにして売らないともったいない、となるとやっぱりブラかなぁ、と、なんとなく
考えてみる気が起きたのです。
パンツと同じように切りっぱなしのニット
生地で、ひもを使った形で、縫い子さんが
楽なように直線縫いだけで済むのがいいな、布も無駄の出にくい直線断ちにできるかな、なんて考えながら、長方形のハギレを胸に
当ててみて、ああやったりこうやったり…。あ!
あの瞬間のことは今も思い出せます。その時は突然湧いたアイデア自体に魅了されて
他のことは考えませんでしたが、あとから思う印象はまさしく、ひらめきが天から
降ってきた、そんな感じでした。
ひらめきといっても、それを構成する要素のひとつひとつは、実はそれまで自分が
蓄積してきた様々な情報でした。そのバラバラのパズルのピースのように自分の中の
どこかにしまってあったものが、何かの拍子にふわっと集まって一気にピタリと
はまって形になったのです。そしてとても不思議なことに、そのそれぞれのピースが
自分の元へきたときのことも、とても鮮明に思い出せるのです。
たとえばパンツを作るときにも役に立ったピースのひとつ、ニット素材は端が
切りっぱなしでもよい、ということは、あるお店で売り子さんが別のお客さんに
「このヨガパンツ、丈が長かったらそのまま切っちゃって、縫わなくても大丈夫ですよ」
と言ったのを聞いて得ました。そのときはただ「へぇ、そうなんだ」と思っただけなの
ですが、なぜかとてもよく覚えています。
ブラの布をひねったら?と考えたときに、瞬時に思い出したのは私が20代の頃やっていた
ジャワ舞踊の衣装でした。衣装の下に幅10cmほどの厚手の長い帯を腰から上に向かって
ぐるぐると巻くのですが、胸の中心で帯を斜めに折って表裏をひっくりし、平たい帯が
胸の立体に沿うようにしていたのを思い出したのです。
衣装の帯は折る際は反転するだけなので、片方の胸は布が裏返しになってしまいます。
それを一回転にして、はい、ゆるり*ブラの出来上がり。
その日のうちに作った最初のサンプルはパンツと同じ
仕様で、ひももコットン100%のニット生地でした。
が、それだと呼吸のときの肋骨の動きにはきつく、
ひもはストレッチコットンにすることになりました。
ちなみに、この「パンツと同じ仕様で」というのは
素材と作業の無駄を減らす目的もありました。結果的に
素材は別のものを使うことになりましたが、ルグの
ブラとパンツのひもの長さが同じ150cmなのは
この名残りです。
無駄を省くといえば、Mサイズのパンツの縦は、Mサイズのブラの縦3枚分とほぼ
一緒なのです。Lサイズも同様です。LサイズはブラのM+L+LLとも一緒です。
こういう入れ子のような関係がパンツとブラにあって、パンツのためには幅がちょっと
足りないという切れ端から、ブラの内側の布が切り出せるようになっています。
これは実は偶然だったのですが、判明したときには、デザインの方が勝手にさらに
無駄が減らせる形になって私の理想に近づこうとしてくれたのかと、一人感動したものです。
ちなみに、2014年3月の発売時の商品名は「ひもブラ」でした。
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ブラに限らず、布ナプキンをバリで作ろう、という思いのきっかけになったバリ人の若い
お母さんの言葉や、ふんどしパンツというコンセプトを最初に教えてくれたお客様との会話、
友人からもらった服の端切れがゆるりパンツの原型になった瞬間、縫い子さん達とのやりとり
で得たヒント、「ブラも作って!」と言ってくれた友人達の顔も忘れません。
全てルグの大事なパズルのピースです。
アイデアを形作るパズルのピースの全てが無理にはめなくてもピタリと収まり、
それぞれがキラキラと輝き生きる商品、そんな商品が私の作りたい商品です。
ゆるり*ブラのようなひらめきの瞬間が、また私に訪れる保証はありません。
けれど、私のパズルのピース集めは続きます。